コアラの行動特性
コアラと言えば、木の上でじっと動かずに寝てばかりいるという印象があります。
もちろん、繁殖期になると活発に活動し、感情表現も激しさを増しますが、それも期間限定と言えるでしょう。
ただ同じコアラであっても、飼育環境下のコアラと野性のコアラとでは事情がどうやら異なる様です。
前者では完全に恵まれた環境の中で生活できるので、一日の大半を安心して寝て過ごせますが、後者では、生き延びる為に時として大胆な行動に出るコアラもいます。
川を泳ぐコアラ
その一例として、ネット上の動画でコアラが懸命に川を泳ぐ姿が話題となっています。
観光客がカヌーでゆったり川渡りをしていたら、近くの対岸にいた一匹の野性のコアラが、しばらく考えた後、意を決して川の中に身を投じ、カヌーに向かって泳いできたのです。
カヌーまで辿り着いてもがいている所を観光客に救い上げられ、無事にカヌーに乗り移る事ができました。
余程、どこか違う場所に行きたかったのでしょう。
途方に暮れていたコアラ
その泳ぐ姿、カヌー上で周りを見渡す姿にはコアラらしい可愛らしさが感じられましたが、私はその動画を通じて、多少の危機感も覚えました。
コアラは生後暫くは母親と過ごし、母親の縄張りのユーカリの木で過ごせるらしいのですが、その後は母親に独立を促され、独力で自らの安住のユーカリの木を探し当てなければなりません。
ある町中では単体で彷徨うコアラの姿も目撃されているそうです。
この動画上のコアラも母親から独立したばかりの子どもで、途方に暮れていたのかも知れません。
人間を全く怖れない様子には可愛らしさも感じられますが、同時に寂しさと不安感も漂わせている印象を受けます。
まとめ
こうした野性のコアラの、時に命を懸けた予想外の行動には、私達人間にも大いに責任があると言えます。
人間がオーストラリア大陸に入植して一気に開発を進めた為に、コアラの食糧源であるユーカリの木の繁殖範囲が狭まってきた事が原因として挙げられるのではないでしょうか。
それ故、野性のコアラがユーカリの木を探すのに命を懸ける羽目になっていると考えられます。
私達はこの泳ぐコアラの動画を見て、表面上の物珍しさや可愛らしさを抱くだけで終わらせず、コアラの生態についての警鐘として重く受け止める必要があるのです。